『計算ドリル』を『ブラックジャック』に。「利用したくない理由」を1つひとつ取り除いて完成した施設
こんにちは、日本介護福祉士会note編集部です。
さて突然ですが、ここはどこでしょう。
そう、ここは「ラスベガス」✨
なんと、デイサービスなんです。
カジノに学んだ「介護の本質」
2013年に最初の店舗をオープンした「デイサービス・ラスベガス」は現在、全国に21拠点を展開しています。定員は1拠点で1日20~35名とし、ご利用者の7割が男性といいます。女性の割合が多いと言われているデイサービスでは、とても珍しいのではないでしょうか。※1
そんなラスベガスを運営する森社長に、今回はお話をお聞きました。
森社長は元々デイサービスの管理者として、一般的な介護サービスを提供していました。ですが、デイサービスの利用を嫌がる方が多いという現実に直面。介護を受けていることを周囲に知られたくない方もいて、そのうちに『つまらない』『やりたくない』という言葉を聞くこともあり、どうしたらデイサービスの利用を楽しんで続けてもらえるか、考えるようになりました。
そんな中、アメリカ視察の合間にラスベガスのカジノに立ち寄った時のことです。
どんな施設?ラスベガス
ご利用者の多くは、要介護であることを周囲に知られたくないし、ご自身も実感したくない。そうした「デイサービスを利用したくない理由」を1つひとつ取り除いて完成した施設だからこその特徴が、ラスベガスにはたくさんあります。
内装は、なるべく「介護施設」の雰囲気を感じさせないよう見た目から楽しさを演出。スタッフのユニフォームは、男性はカジノのディーラー風の白シャツに黒べスト、女性はシンガポール航空のキャビンアテンダントの制服をイメージして創作したオリジナルです。
また、送迎車は、白のワンボックスカーではなく黒塗りのミニバンで、パッと見ただけではデイサービスの車だと分かりません。介護を受けたくない人の気持ちを尊重し「介護」が前面に出ない仕組みが至るところに散りばめられています。
麻雀のメンツってめちゃめちゃ大切🀄
ラスベガスのご利用者は、午前と午後に一斉におこなわれる機能訓練の体操に参加します。この体操に参加するとオリジナルの施設内通貨「ベガス」を受け取ることができ、様々なレクリエーションで使用することができます。
レクリエーションは、麻雀やブラックジャック、パチンコ等を中心としたゲームや、カラオケなど多様なメニューから自由に選べます。
このレクリエーションにはスタッフも参加し、頭を使ってゲームに取り組みながら、自然とスタッフや他のご利用者ともコミュニケーションが楽しめるようになります。
取材に訪れた夏の期間はちょうど麻雀の全国大会が開催中で、多くのご利用者が参加していました。全21店舗で開催され、外出しづらい真夏と真冬に大会をおこなうことで外出のきっかけづくりになれば、と考えているそう。
「仕方なく行く場所」から「行きたい場所」へ
麻雀やカードゲームなど、スタッフがご利用者とじっくり向き合う時間はどう捻出したのでしょうか。そこには生産性向上のための工夫がたくさんありました。バーコードを用いた連絡ノートをはじめバックオフィス業務のIT化を進め、非効率な事務作業をなくすことを徹底。また入浴はご希望の方のみとし、その分、入浴介助は一人のスタッフが丁寧に30分かけておこなうことにしました。その結果、入浴中の転倒などの事故も減り、満足度が向上しました。
極めつけは、選べるランチメニューです。チャーハン、カレー、グラタンや冷やし中華まで。どうやってこんなに用意しているの?と思いきや、全部冷凍食品なのだそう。
ご利用者と積極的にコミュニケーションが取れる時間を捻出しているのは、対面でのコミュニケーションこそが、ご利用者の求めていることだと考えているからです。ご利用者の中には、ラスベガスに通いたくてわざわざ鹿児島から引っ越してきた!という方も。
※1内閣府