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「誰だって、どこにだって行ける!」を合言葉に

「私たちが『旅行』という楽しみを提供するのは、リハビリへのモチベーションをアップしてもらうことも、私たち専門職の役割のひとつだと思っているから。それに、デイサービスのご利用者さんは、旅行好きな方が多いと思います。」
そう教えてくれたのは今回お話を聞いた、トラベルwithじぇぷとのメンバーで理学療法士の鈴木洋平さんと介護福祉士の近藤未咲さん。

「トラベルwithじぇぷと」はリハビリ型デイサービスなどを運営する合同会社「P-BEANS」が2017年に新規事業の1つとして立ち上げました。
国内の旅行業を取り扱う第2種旅行業者として、医療・介護の専門職、そして旅行企画のプロとして、旅行の介護・介助をサポートしています。



誰でも当たり前に旅行へ行ける社会を創る

きっかけは10年ほど前。
あるご利用者が旅行に行きたいけれど、自分に行けるかとても不安に思っていました。「体の状態を知る私たち専門職がサポートすれば、安心して旅行を楽しんでもらえるはず。」とリクエストに応える形でサービスが始まりました。
ご利用者さんを対象とした季節の外出イベントから始め、専門の事業部門を立ち上げたのち、旅行代理店としての営業をスタート。2018年に第3種旅行業を申請し運営を始めました。

工場を改装した開放的なリハビリデイサービス施設の中に
トラベルwithじぇぷと事務局があります

誰でも当たり前に旅行へ行ける社会を創る!その想いを実現するためには、旅行のサポートをする仲間が全国に必要です。
そのため「トラベラーズパートナー」と「トラベラーズマネージャー」という独自の制度を作り、介護付き旅行の注意点やプランの立て方など、知識とノウハウを広め添乗できるスタッフを育成する活動もおこなっています。

取材後、実際の「トラベラーズパートナー研修 」にも参加しました

5年前に研修を作り、今ではトラベラーズパートナーの人数は約350人になりました。登録者には介護職以外に学生も多く、中には医学生や看護学生も。旅行の支援は、普段接することのない人たちとの交流や日常とは異なる場面も多く、様々な能力が必要とされることから、スキルアップのために参加する方もいらっしゃいます。副業としてトラベラーズパートナーに参加している方も多く、仲間の輪は全国に広がりつつあります。

「ネットワークで繋がっていれば、旅行先の情報をもらえたり、行った先でも手伝ってもらえる。仲間が多ければ多いほど安心して旅行に行くことができます」
そうお話してくれた鈴木さんは、旅行にはプラスの効果しかないと感じているそう。

「できる能力があっても、自分にはできないだろうという思い込みがある。でも、いざ旅行へ行って環境が変われば、案外できちゃうことが多いんです。こんなこともできるんだ、と自信がついて『次はこういう所に行こう、目標はこうしよう』と次の展開に進んでいける。リハビリへの気付きのひとつにもなっています。」


旅行のあとはリハビリ、リハビリしたらまた旅行へ行こう

実際のじぇぷとの旅は、依頼があり要望に沿って企画するものや、ゼロから旅行を企画し参加者を募集するものもあります。介護タクシーがご自宅までお迎えにいき旅行が始まりますが、ご家族が送り迎えをしなくてもよいため旅行のハードルが低く、いつものデイサービスへ行くような気軽さで旅行に行くことが可能です。

取材に伺った際も、たくさんの旅行企画がありました🦦

旅行が決定すると、スタッフ同士は必ずLINEグループでご利用者の日常の様子や体の状態を共有することから始めます。旅行先での注意点やバリアフリーの状況などトラベラーズマネージャーが全てを把握。
また、旅行中に気が付いたことはご利用中のデイサービスの店舗にいるPT(理学療法士)と共有するだけでなく、参加者のちょっとした会話をひろって悩みを聞いたり、次の旅行プランにつなげたり。

旅行のあとはリハビリ、リハビリしたら旅行、と続けていくことで、ご利用者の心身機能の改善に取り組んでいます。長期間にわたるリハビリは、辛く目標を失いがちですが、旅行というゴールを設定することで気持ちが前向きになるそうです。

日本百名山、滋賀県の伊吹山へ


旅行をきっかけに生活の幅が広がる

介護福祉士16年目、トラベラーズマネージャーの近藤さんも、高齢者の方が旅行に行くことの良さを実感しているといいます。

「グループ旅行のほか、最近では1対1のプライベート旅行を任せてくれる方もいらっしゃいます。最初は、私には行けない、と足踏みしている方も、1度旅行へ行くとまた行きたいからリハビリをがんばろう、という動機付けになっていくんです。
旅行がその方の外に出るきっかけになり、生活の幅が広がったとき、この仕事をやっていてよかったと心から思います。
介護福祉士として1年目は特別養護老人ホームで働いていましたが、福祉の世界を幅広く知るために重症心身障害等を経て現在に至ります。そして、じぇぷとのメンバーと旅行支援を提供する中で、介護福祉士としての役割は介助だけではないと実感。
様々な職種のスタッフと働ける環境で、これまで介護福祉士として働いてきた経験がとても役にたっていると感じています。」


左からお話を聞いた、稲垣さん、近藤さん(介護福祉士)、鈴木さん(理学療法士)

体が自由に動かなくなったり、認知機能が落ちてきている方にとって「どうせできない、行けない」という壁を壊し、わくわくした気持ちで毎日過ごせる環境を整えること。
旅行は心身機能を維持するツールの1つと考えていると鈴木さんは言います。

「よりクオリティを上げて、多くの方が旅行に行ける世界を目指していきたいです。全国の仲間が協力して、誰でも旅行に行けることが当たり前になるのが、やっぱり1番なので」

「誰だって、どこにだって行ける!」を合言葉に、多くの仲間とともに、じぇぷとの旅は続きます。



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